高品質のタオルのイメージがすっかり定着している「今治タオル」。ブランドの認定は、タオル製造の名産地である愛媛県今治市にある今治タオル工業組合が行っています。
タオルのレベルが一定以上であることを示すための評価基準があるのですね。
ただ、認定の条件が専門的ということもあって、今治タオルブランドの認定基準について一般の消費者には伝わっていないところでしょう。
今治タオルの評価基準がわからないと、誤解が生じる
最近タオルショップの口コミなどをみていても、「今治タオルなのに〇〇だった」、「前に使っていた今治タオルの方が良かった」が増えてきているように感じます。
今治タオルに対する期待値が高く、実際に届いたものが予想と違っていたというもの。
これは、今治タオルの特性について誤解があるために起こると思うのです。
以下では、2022年最新の状態の吸水率や脱毛率の評価の基準を確認していきましょう。
今治タオルブランド商品の基準
今治タオルにはブランド認定されるために満たしておかなければならない品質の基準が設けられています。これは、ブランドに選ばれるタオルを客観的な数値管理するために、2006年に制定されたもの。
現在は12個の基準が設定されており、これを満たしたものだけが今治タオルのブランドネームを獲得することができるというシステムになっています。
だからこそ安心して購入できるし、品質が良いイメージが付いていると思うのですが、その基準についてはあまり見ていない方も多いです。今回は基準について、改めて確認していきましょう。気になるものについては、個別でメモを入れていきます。
吸水性(どれだけ早く水を吸うのか)
試験方法:JIS-L1907 沈降法試験
5秒以内
(「未洗濯」と「3回洗濯」の2回の検査に両方とも合格)
吸水性試験で気になるところ
上の試験だけなら、すごく良いと思うのですが、やや気になる事項が備考に書かれています。それが以下。
吸水性試験は、素材に関係なく適用する。沈降法による検査が不合格であっても、滴下法による検査が(「未洗濯」と「3回洗濯」の2回の検査に両方とも)1秒以内の場合は合格とすることができる。顔料プリント商品の場合は「顔料プリント部面積比率証明書」を提出すること。吸水性試験の洗濯方法については、3回洗濯後乾燥機使用とする。
引用:今治タオル工業組合
これは、沈降法がNGでも他の手法でOKなら認められるということ。水に浮かべる沈降法だと、肌に触れてスッとお水を吸い取ってくれるような感触になると思います。
一方で滴下法は、水の重さでタオルの中に入っていけばよい。つまり空間があるのであれば条件を満たす可能性があるということ。また、顔料プリントは測定はパイル部分で行い、プリント部分は比率さえ満たしていればタオル全体の吸水は問わないとも取れます。
今治タオルなのに吸水性が良くないという口コミを目にするのも、この合格基準の甘さも影響しているのと感じます。
脱毛率(どれだけ毛羽落ちしないか)
試験方法:JIS-0217 洗い方103法(タオル検法)
パイル 0.2%以下
無撚糸 0.5%以下
シャーリング 0.4%以下
※なお、無撚糸の合格基準は、パイル保持性試験が測定不能な製品に適用することができる。
毛羽落ちのしやすい今治タオルは存在する
通常のパイル、無撚糸、シャーリング加工とタオルに使われる糸や処理条件によって、異なる脱毛率が存在します。
これはタオルを評価する人たちは、当たり前の事なのでしょう。
ただ、毛羽落ちのしにくいものを選びたいのであれば、消費者は「パイル>>シャーリング>無撚糸」の順に埃が出にくいということを知っておいて良いのだと思います。無撚糸は柔らかいけれど、長持ちはしないと分かって購入しなければなりませんね。
パイル保持性(パイル地タオルのパイル強度)
試験方法:タオル検法
バスタオルとタオルケット 2.45cN/パイル以上
フェイスタオルとウォッシュタオル 2.16cN/パイル以上
パイルを決められた量をクリップではさみ、速度一定で引っ張ることでパイルどれくらい力を入れても大丈夫かを確認する試験になります。
※パイル保持性試験に関し、ハンカチ類、裏ガーゼ製品及びタオルマフラーはJIS-L1075 B法(パイル保持性試験)による試験で合格基準 500mN以上。
また、無撚糸については、「今治タオルブランド商品 品質基準」からパイル保持性試験は除外する。
パイルの耐久力も「無撚糸」の特別扱い?
上の※印は試験の説明の備考に書かれている、追加条件なのですが、この文を読むと無撚糸はパイル保持性の評価に関係なく今治タオルとして認められると読めます。ふわふわで柔らかいタオルに無撚糸が使われていることが多いですが、おそらく明らかに糸の耐久性は基準に満たないくらいに低いということですね。
毛羽落ちしやすく強度も低い。長く使いたい時には無撚糸ではなく、しっかり撚りの入った普通のパイル地タオルを購入するのが良いと思います。
耐光(光で色落ちしないこと)
試験方法:JIS-0842 (カーボンアーク法)
4級以上(パステル色及び淡色3級以上)
太陽光にさらされた時にタオルが受ける紫外線を模擬したアーク灯照射を20時間与えて、色が一定以上あせないことを確認する試験。
草木染めなど天然素材のものは影響を受けやすい特徴があります。また、洗いが十分になされていることを確認する意味合いもあります。
染色堅牢度
耐光と後に続く洗濯、汗、摩擦の試験は、色移りや変色の程度を確認する試験になります。試験結果によって5~1級に分類されます。最も程度が良いものは、5級となり、級が1級に近くなるほど変退色性や汚染性が高いことを示します。
洗濯(洗剤による変色と汚れの程度)
試験方法:JIS-0844 (A-2法)
変退色 4級以上
汚染 4級以上
マルセル石鹸という決められた石鹸の種類と量で洗濯を30分間行ない、色落ち度合いを確認する試験。
メモ
試験のために白い布を入れて、洗濯液にどれだけ色が移ったかを確認するため、濃い色ほど今治タオルとして認められるのが難しいという事のように感じます。
汗(酸・アルカリによる変色と汚れの程度)
試験方法:JIS-0848
変退色 4級以上
汚染 3~4級以上
人の汗が付いた環境を想定した、酸性とアルカリ性の薬品を付けた状態で、高温の状態にしばらく置いて色や状態の変化を確認する試験。
摩擦(こすれによる色移りの程度)
試験方法:JIS-0849(Ⅱ型)
乾燥 4級以上
湿潤 2~3級以上
(濃色及び顔料プリントは0.5級下げる)
湿った状態と乾燥した状態で擦って色の状態を確認する試験。テスト用の白布の汚染の程度で判断する。
引張強さ(引っぱって傷まないか)
画像引用:島津製作所
試験方法:JIS-1096 A法(ラベルドストリップ法)
縦 147N以上
横 196N以上
タオル生地を引っ張って切れる段階の強度がしっかりあるかを確認する試験。
メモ
この試験の条件は、厚手のものに有利。エアリー感があったり薄手のタオルで今治タオルブランドが付いているものは、良い糸を使っている可能性が高いとも言えます。(基準は甘めで、特殊な加工がされているもの以外はクリアするようですが)
破断強さ(引っぱってちぎれないか)
試験方法:JIS-1096 A法(ミューレン法)
392.3kPa以上
一定の形に切られたを引っ張り一定上の強度があることを確認する試験。
寸法変化率(洗濯したあとの型崩れ)
試験方法:JIS-1096 G法(電気洗濯機法)
決められた大きさにカットしたタオルについて、40℃のお湯で5分間お洗濯。その後、お水で2回水洗いを行い、吊るし干しをする。
この後の生地の収縮率で一定以上縮まないことを確認する。
メモ
ワッフルガーゼやボーダー織のような特殊な織り方のものは、縮みが起こりやすいことがあるので、干す前に形を整えてから陰干しをするなどの工夫が必要になります。
メロー巻き部分の滑脱抵抗力(糸のすべりの良さ)
試験方法:JIS-1096 タオル検法
縦 20N以上
横 30N以上
縫い目部分に力が加わえて、縫い目が開かないかを確認する試験。滑脱とはこの縫い目の広がりのことを指します。抵抗力を測定して、一定の力以上で広がらないことを確認します。
織り方の方向があるので。縦・横方向にタオルの試験片を引張試験機に取り付け、糸の引き抜き最大抵抗力を測定することで算出されます。
有害物質(ホルムアルデヒドの量)
試験方法:アセチルアセトン法
吸光度差0.03以下
タオル製品に残留する化学薬品がないことを確認する試験。有害物質が残留していないことを確認することで、健康にも問題ない安心感があります。
ちなみに吸光度差0.03という基準は、ppmという量に換算すると9.6ppm以下。乳幼児向けの製品の残留基準が16ppmということで、かなり安全度の高いものになっています。
まとめ
今回は今治タオルとして認められるための品質の基準について、気を付けるポイントなどを含めて解説しました。
今治タオルのブランド認定を行っている今治タオル工業組合でも、最近人気のある無撚糸タオルについては耐久性の低さなどを理解して今治タオルのブランドを付けているところがあるようです。
もし、1枚のタオルを長く大切に使いたいという場合には、より耐久性が確実なしっかりと撚りのあるパイル地のタオルを選ぶのが良さそうです。
撚糸のタオルの中でも、肌触りの良いものを見つけることができれば、きっと一生使ってもいいと感じるものになるでしょう。いろいろ試して、特徴を肌で感じてみてください。
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